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製造・調達

JITとJIC:在庫戦略はどちらかではなく設計変数である

AsparImpex 編集部 3分で読めます
JITとJIC:在庫戦略はどちらかではなく設計変数である

在庫をめぐる議論は、しばしば二つの立場の対立として描かれる。在庫を極力持たないジャストインタイム(JIT)と、あえて在庫を厚めに持つジャストインケース(JIC)である。供給網の途絶が相次いだ局面では、JITが批判され、JICへの回帰が語られた。しかし、どちらかが常に正しいという捉え方そのものが、実務を見誤らせる。

対立軸として語ることの誤り

JITは、必要なものを必要なときに必要なだけ供給し、在庫の無駄を削る考え方である。トヨタ生産方式に代表されるこの手法は、在庫が抱える保管費や陳腐化のリスク、そして問題を覆い隠す緩衝としての在庫を減らし、工程の改善を促す効果を持つ。効率という観点では強力な枠組みである。MITの国際自動車プログラムに基づく研究『The Machine That Changed the World』が、この方式を「リーン生産」として広く紹介したことも、JITが世界に普及する契機になった。一方、JICは、途絶に備えて在庫という緩衝を確保する。効率は落ちるが、供給が止まったときに生産や販売を続けられる復元力を得る。両者は目的が異なるのであって、優劣を競う関係ではない。

二つの方針を品目ごとに比較する

実務では、この二つを品目ごとに使い分ける。判断を分ける主な軸は三つある。第一に需要の読みやすさで、安定して予測できる品目はJITが向き、変動が激しい品目は緩衝が要る。第二に代替の難しさで、どこでもすぐ調達できる部材はJITでよいが、代替が難しい品目は在庫で備える価値が高い。第三に途絶したときの影響の大きさで、止まると生産全体が停止する品目ほど、JIC寄りの設計が正当化される。

  • 需要が安定し代替も容易な品目:JITで在庫を絞る
  • 需要が変動する、あるいは代替が難しい品目:緩衝在庫を確保
  • 止まると全体が停止する重要部材:影響の大きさに応じてJIC寄りに

この使い分けは、供給者を複線化するかどうかの判断と連動する。複線化しても切り替えに時間がかかる品目は、その時間を在庫で埋める必要があり、両者は一体で設計される。詳しくはサプライヤーリスク管理とマルチソーシングの設計で扱ったとおりである。

設計変数としての在庫

もっとも、在庫を厚くすれば安心というわけでもない。過剰な在庫は資金を寝かせ、陳腐化や廃棄のリスクを抱え、需要が読み違えれば損失に変わる。JICへの回帰を一律に進めれば、今度は在庫過多という別の非効率を招く。港湾混雑の局面で在庫の薄さが露呈したことは事実だが、その反動で全品目の在庫を積み増すのは過剰反応である。あの経験が示したのは、在庫を一律に語れないという教訓であった。この点は港湾混雑が示した設計上の弱点で論じたとおりである。

在庫は、JITかJICかという二者択一ではなく、品目ごとに連続的に調整する設計変数である。効率と復元力のどちらを重く見るかは品目で異なり、その配分こそが在庫戦略の実体をなす。対立として単純化するのをやめ、変数として捉え直すことが、実務的な在庫設計の出発点になる。

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