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製造・調達

サプライヤーリスク管理とマルチソーシングの設計

AsparImpex 編集部 4分で読めます
サプライヤーリスク管理とマルチソーシングの設計

調達戦略の議論では、コストと品質が長らく中心を占めてきた。しかし供給の途絶が相次いだ経験を経て、リスクという第三の軸が同格の重みを持つようになった。なかでも、一つの供給者に依存する単一調達の見直しは、多くの企業にとって喫緊の課題になっている。問題は、複線化すべきという結論ではなく、どう複線化するかという設計の中身にある。

単一調達の危うさは平時には見えない

単一調達は、平時にはむしろ合理的に見える。取引を集約すれば単価は下がり、品質管理も一元化できる。危うさが顕在化するのは、その一社が被災し、あるいは操業を止めたときである。代替の供給者を平時に確保していなければ、切り替えには時間がかかり、その間の生産停止が損失として跳ね返る。国際標準化機構が定めるリスクマネジメントの枠組みであるISO31000は、こうした低頻度で高影響の事象を、発生確率だけでなく影響の大きさで評価することの重要性を示している。単一調達のリスクは、確率が低いからと軽視すると、影響の大きさを見誤る典型例である。

マルチソーシングは冗長化ではなく設計

マルチソーシングというと、単純に供給者を二社、三社と増やすことだと受け取られがちである。しかし全品目を一律に複線化すれば、管理コストが膨らみ、各社への発注量が減って単価の交渉力も落ちる。現実的なのは、途絶したときの影響が大きく、かつ代替が難しい品目に複線化を集中させることである。汎用性が高くどこでも調達できる部材まで二重化する必要は薄い。複線化は、影響度と代替可能性の二軸で品目を分類し、資源を配分する設計作業として捉えるべきである。

  • 影響大・代替難:複線化と在庫の優先対象
  • 影響大・代替易:供給者の切り替え手順を整備
  • 影響小:既存の効率を維持し、過剰な冗長化を避ける

可視化はティア2以降で途切れる

複線化を設計するには、供給網の構造が見えていなければならない。ところが、多くの企業が把握できているのは直接取引のあるティア1までで、その先のティア2、ティア3は見えていないことが多い。一次供給者を二社に分けても、両社が同じ二次供給者や同じ素材の産地に依存していれば、複線化は見かけだけで、単一障害点は上流に残る。可視化がティア1で止まると、こうした隠れた集中を見落とす。真のリスクは、契約関係の見えない奥に潜んでいる。

認証と在庫方針をリスクに結びつける

複線化を実効あるものにするには、二つの補完が要る。一つは認証の整備である。国際的な供給網のセキュリティ管理の枠組みであるISO28000のような基準を用い、代替供給者が品質や管理体制の要件を満たすことを平時に確認しておく。切り替えが必要になってから審査を始めるのでは間に合わない。もう一つは在庫方針との連動である。複線化しても切り替えに時間がかかる品目は、その時間を埋める在庫を持たなければ、途絶の初期を凌げない。この在庫の持ち方はJITとJICをめぐる在庫戦略と一体で設計する必要がある。

供給者のリスク管理は、拠点の立地選択とも表裏一体である。近接化や友好国への移転が語られるが、それも複線化の設計と切り離せない。詳しくはニアショアリングとフレンドショアリングの実像で論じたとおりである。加えて、供給者が接続する情報システムの安全性も見過ごせない論点で、制御システムを狙う脅威については製造現場のOTセキュリティで扱う。単一調達からの脱却は、供給者を増やすことではなく、影響度・可視化・認証・在庫を一つの設計として束ねる作業なのである。

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